この記事では、『朝の5分間 脳内セロトニン・トレーニング (東邦大学医学部教授有田秀穂 著)』を読んだ感想を記させていただきます。
以前『朝活』という言葉を聞いたことがあります。
朝は心身にエネルギーが満ちて、活力にあふれているので、その時間を利用して、自分を向上させるために何かに取り組むことを指している言葉です。
では、どうすれば、その心身にエネルギーが満ちた理想的な朝を手に入れることができるでしょうか?
それは、脳内物質のひとつである『セロトニン』が重要な鍵となっています。
セロトニン・トレーニングは、朝の5分が勝負
セロトニンが十分にあると、前向きで気力にあふれ、落ち着いて過ごすことができます。
ちょっとしたことでクヨクヨせず、頭がスッキリとして、さえた状態をキープします。
これは、脳が活性化されるために起こるのです。
逆に、セロトニンが不足すると、気分が不安定になる、寝起き・寝つきが悪い、なんとなく不安だ、ひとつのことが気になって仕方がない、などの不調があらわれたり、ストレスに弱くなってキレやすくなったりします。
「朝」は「ダイヤモンドの時間」
セロトニンは、眠っている時にはほとんど脳内には出ません。
太陽の光に影響されて、徐々に脳内で作り始められます。
そして、目覚めとともに分泌が始まります。
体はそれに反応して活動のための準備に入るのです。
こちらの著書が朝にこだわる第一の理由は「セロトニンが朝に作られるから」ということです。
朝、セロトニンがたくさん作られれば、スムーズな一日のスタートをきることができます。
そして、第二の理由は、そもそも人間の脳は優秀。夜暗くなると眠くなり、朝、太陽の光を浴びると自然と目が覚めるようになっています。
この「覚醒」を司っているのが、セロトニンという脳内物質なのです。
セロトニンは一日のスタートを演出する物質なのです。
セロトニンがきちんと働きさえすれば、すっきりと朝に目覚めることは、それほど難しいことではありません。
簡単なトレーニングで快適な一日を
セロトニンを増やすことは簡単です。
「太陽の光」と「リズム運動」です。
まず、朝はしっかり太陽の光を浴びて、「今はセロトニンを作る時間だ」ということを脳に教えてあげましょう。
例えば、朝カーテンを開けて日光を部屋に取り入れる、通勤電車で日のあたる方に座る、などの工夫でセロトニンは増えていくのです。
「リズム運動」というのは、歩くこと、呼吸すること、物を食べること、このどれもがリズム運動です。
一定のリズムで同じ動きを繰り返し行うことが、すでにリズム運動なのです。
体や心の不調さえ治す効果があるセロトニン・トレーニングをするにあたって、「継続は力なり」「気軽に楽しく」という合言葉を覚えておいてください。
一生懸命やろうと思わなくて大丈夫です。
後述する方法のうち「これなら毎日続けられそうだ」と思うものから、順にチャレンジしてみてください。
セロトニン・トレーニングに期待できる効果
② 朝に集中力やカンが冴えるので、今日は仕事が効率的にこなせる。
③ 朝にスタートダッシュが聴くおかげで、午後の仕事にも余裕が出てくる。
④ 残業することが少なくなり、自分の時間を作ることが出来る。
⑤ 心と体が健康になる。
朝のたった5分の積み重ねが、あなたの体に、心に、生活にとても大きな変化をもたらしてくれます。
朝5分で簡単にできるセロトニンを増やす方法【基本編】
朝は日光をたっぷりと浴びる
太陽の光が光信号となって網膜に入り、直接セロトニン神経を刺激します。
(だからといって、肉眼で直接、太陽を見つめるようなことは絶対にしないでください。網膜を痛めることになります。)
朝は起きたら、まずカーテンを開けて、朝日を部屋に取り込みましょう。
通勤時に電車を利用している人なら、日のあたる場所に座ると良いでしょう。
セロトニンは朝に作られますから、朝の太陽光がもっとも効果的なのです。
セロトニンと太陽の光という関係を考える上で興味深い話があります。
『冬季うつ病』という病気をご存知でしょうか?
冬季うつ病とは、その名前の示すとおり、冬場にうつ症状が出るもので、春が来ると回復します。
冬季うつ病になると、次のような症状が主に見られます。
・睡眠時間が長くなり、眠くてたまらない
・食欲が出る
・体重の増加が著しい
これは、冬に日照時間が短くなるため起こる病気で、10人に1人ほどがこの症状を持っていると言われています。
日頃から昼夜が、逆転した生活を送っている人、また、日中もカーテンを閉めて薄暗い中で過ごすことが多いという人も、日光不足にならないよう、くれぐれも用心が必要です。
雨の日でなければ、窓から顔を出し、太陽の光を浴びるのも有効な方法です。
また、日光は直接光でなくても良いので、まずは雨戸やカーテンを開けて、室内に日光を入れることも効果があります。
特に、冬場は日光不足になりやすいので、心がけて日光を浴びるようにしましょう。
鏡の前でニッコリ笑う
朝、鏡の前に立った時、自分に笑いかけてみましょう。
一人で鏡に向かって笑っているというのも、はたから見れば奇妙な光景かもしれませんが、自宅でなら許容範囲でしょう。
笑顔を作るというのもリズム運動のひとつなのです。
口の口角をグーッと持ち上げ、元に戻す。
またグーッと持ち上げ、また元に戻す。
とても簡単な運動ですが、効果はあります。
余談ではありますが、ちょっと気分が落ち込んでいるような時にも、わざと笑顔になってみることをおすすめします。
たとえ、作り笑いであってもなんとなく気分が明るくなり、自然と笑えるようになるからです。
人の心は形に影響されます。
いつも暗い顔をしていると気分も暗くなってしまいます。
逆に笑顔でいれば、心も晴れてくるものです。
体幹を使った運動が効果的
ゴルフスイングやバットの素振りなども立派なリズム運動です。
ゴルフスイングやバットの素振り運動の優れた点は、「腰をひねる」という点です。
腰は体幹(体幹とは体の中心部分、「腹筋、背筋、股関節から広背筋上部」を指します。)の一部です。
大きな筋肉をバランスよく、ゆったりと動かせば、その分効果的にセロトニン神経に刺激を与えることができます。
つまり、体感を使った運動は、セロトニン神経への働きかけが強いのです。
朝、食事の前に太陽の光を浴びながら、自宅の庭やベランダに出て、5分間ほどゴルフやバッティングの素振りをするのもセロトニン・トレーニングのひとつです。
朝、体をほぐす感じで行うと良いでしょう。
朝食はしっかり食べる
朝に脳を活性化させて、有意義に一日を過ごそうと思うならば、朝食を食べることは絶対に不可欠なことです。
夕食でとった脳のエネルギーのブドウ糖は、翌朝で空っぽになってしまっているので、朝食抜きで一日をスタートさせようとするのは、燃料のない車のエンジンをかけようとするようなものです。
通勤中は歩調に意識を集中
通勤や通学で、駅や会社、学校まで歩くのはごく普通の行為ですが、セロトニン・トレーニングにもっとも適しているのは朝です。
それは、太陽の光がセロトニン神経を刺激するからです。
そして、歩く時は、散歩のように散漫に歩いたり、犬の散歩のように自分のリズムで歩けなかったりする場合は、効果を期待できません。
テンポ良く早足で、トレーニングとして歩くよう心がけましょう!
余裕のある時はこんなことをやってみよう【応用編】
セロトニン・トレーニングを習慣化する
セロトニン・トレーニングは、開始後おおむね5分ぐらい経ってからセロトニン神経に影響を与えはじめ、30分後くらいまでセロトニン分泌量を増加させ続けます。
ある程度の効果を期待できる最短の時間が5分で、さらに欲を言えば30分ぐらい継続するのが理想的なのです。
ガムを噛むなどの咀嚼運動なら5分といわず20~30分ぐらい普通にできるでしょう。
慣れてきたら、30分ぐらい時間をかけてトレーニングしてみてください。
食事からセロトニン原料をうまく摂取しよう
セロトニンの原料は『トリプトファン』という必須アミノ酸の一つです。
必須アミノ酸とは、たんぱく質の元となる栄養素で生命活動を維持していくためにはなくてはならないものです。
私たちの体を構成しているたんぱく質は20種類ありますが、そのうちトリプトファンを含む8種類は体内で合成することができず、食物から補給しなければなりません。
もし欠けてしまうと、体に多大な弊害を引き起こすので、必須アミノ酸と呼ばれています。
トリプトファンは様々な食品のたんぱく質に含まれています。
食物として体内に取り込まれたトリプトファンは、脳内に運ばれて、ビタミンB6・ナイアシン・マグネシウムとともにセロトニンを合成します。
トリプトファンは、バランスの良い食事をしている限り、不足するようなことはありません。
サプリメントなどで安易に摂取するのはやめましょう。
セロトニン合成に役立つ食品
トリプトファンを多く含む食品を挙げてみましょう。
大豆、納豆、豆腐、味噌やしょうゆなどの大豆加工食品、ごま、かつお節、カシューナッツ、ピーナッツ、しらす干し、わかめ、牛乳、ヨーグルト、プロセスチーズ、卵黄、アボカド、バナナなど。
セロトニンの合成を助けるビタミンB6も、あわせて摂ることが望ましいでしょう。
ビタミンB6を多く含む食品には、次のようなものがあります。
さんま、いわし、かつお、さば、たい、にしん、まぐろなどの魚、豚のモモ肉、牛レバー、大豆、小麦胚芽、玄米、ニンニク、トウガラシ、ショウガなどの香辛料、バナナなど。
これらの食材をうまく組み合わせて、毎回の食事の工夫をしましょう。
トリプトファンもビタミンB6も、大量に摂らなければならないものではありません。
普通に食事をしていれば、自然に補えるものですから安心してください。
その中でも、トリプトファン・ビタミンB6、ブドウ糖の3つを1度におぎなえる食品があります。
それが『バナナ』です。
セロトニンを増やすのに、バナナは非常に理想的な食品といえます。
水泳は全身を使ったリズム運動
水泳は、まさに健康のためには理想的なリズム運動といえます。
セロトニン・トレーニングのためだけと言わず、色々な効果を期待して、習慣化してみてはいかがでしょうか?
水泳は関節に負担をかけないので、高齢まで続けられるのも魅力です。
その他のおすすめセロトニン・トレーニング
カラオケもいいセロトニン・トレーニングです。
カラオケを歌う時は、大きな声で元気よく、リズムに乗って歌いましょう。
曲に合わせて、体を揺らしたり、足でリズムをとりながら歌うのもおすすめです。
実は、「貧乏ゆすり」がセロトニン神経にとって有益だという実験結果もあるそうです。
他にも、「簡単にできる」「リズムに乗りやすい」「負担が少ない」「体感を使う」といった理由から『フラダンス』や『阿波踊り』のようなダンスもセロトニン・トレーニングに向いています。
「技術力が必要」「負担が高い」「リズムが複雑」な『社交ダンス』『エアロビクス』『ジャズダンス』はどちらかと言えば適していません。
またゲームセンターで人気の『太鼓の達人』といったような打楽器系のゲームはセロトニン・トレーニングとしてのリズム運動としては最適です。
音符やコードも読めなくても簡単にできる打楽器系ゲームのような単純なものほどセロトニン・トレーニングには向いているのです。
まとめ
この本を読んで感じたことは、セロトニン不足で心のバランスを崩してしまう恐れがあり、そのセロトニンを増やすことがまた健全な体と心を取り戻すための大切な鍵であるということが分かりました。
しかし、セロトニン・トレーニングはそんなに難しくもなく、誰でも簡単に行えるものなので、心に不調を感じている人、うつ病の改善にもつながるので、できるのであれば日常生活に取り入れていただきたいトレーニングだと感じました。
時間は短くて5分、長くても30分という事なので、比較的簡単に日常生活に取り入れられそうですね。